奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(ノネコ管理計画)は、ネット記事やツイッター・InstagramといったSNSで「殺処分計画だ!」と糾弾されることも多い計画ですが、しかし実際のところ2022年6月現在において未だ殺処分ゼロを達成している計画でもあります。
この記事では、殺処分計画と言われながらも何故2018年から始まって4年目の計画なのに殺処分がゼロなのかをまとめています。
奄美のノネコ管理計画で殺処分ゼロの理由
ここでは早速「奄美のノネコ管理計画で殺処分ゼロの理由」をまとめていきます!
ノネコ管理計画で殺処分がいまだゼロな理由は以下になります。
- ノネコを引き取っている人がいるから
- ノネコ管理計画はノネコ譲渡も含まれている計画だから
- 捕獲数が当初の予定より少ないから
それぞれ詳しく見て行きましょう。
殺処分ゼロの理由1.ノネコを引き取っている人がいるから
ノネコが殺処分されていない理由として、よく挙げられる理由がこちらの「ノネコを引き取っている人がいるから」です。
どういうことなのかというと、奄美大島で捕獲されているノネコは現在全て、ノネコを飼い猫として引き取った人や飼い猫を探している人に譲渡する活動をしている方たちに譲渡されているわけなんですよね。
ノネコといえど、イエネコですから私たちが普段慣れ親しんでいるあの猫と同じなので飼い主がいれば殺処分する必要もなくなるわけです。
ですので、2018年から始まったノネコ管理計画では未だ殺処分ゼロなんですね。
殺処分ゼロの理由2.ノネコ管理計画はノネコ譲渡も含まれている計画だから
「殺処分ゼロの理由1.ノネコを引き取っている人がいるから」
↑こう聞くと、特別な人たちがノネコを引き取っているんだ!と考えちゃうかもしれません。
しかし、実際のところノネコ管理計画は殺処分計画と一部で言われてはいるものの、最初からノネコ譲渡も含まれている計画だったりします。
飼養を希望する者への譲渡に努め、譲渡できなかった個体は、できる限り苦痛を与えない方法を用いて安楽死させることとする。
奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画
譲渡されなかった場合はやむを得ずの安楽死がありますが、飼養を希望する者がいたならば最初から譲渡しますよ!と奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画には書かれているんですよね。
殺処分ゼロのためには引き取る人も必要ですが、まず譲渡されるための土台もなければそもそもが譲渡すらできないため、殺処分ゼロの理由として「譲渡の土台」があることも広く知られてほしいです。
譲渡のためにはノネコを捕獲するために山に入り、1日1回の見回りもして捕獲された猫はノネコセンターに送られ検査するなどの工程もあります。譲渡の土台と言っても一概には言えず、いろいろな人の頑張りで支えられています。
殺処分ゼロの理由3.捕獲数が当初の予定より少ないから
ノネコ管理計画の捕獲数が当初の予定より少ないことは、2018年度のノネコ管理計画の検討会でも話題になっています。
環境省の「2018年度奄美大島における生態系保全のためのノネコ捕獲等に係る検討会」が6日、奄美市名瀬のAiAiひろばであった。奄美大島で野生化し生態系を脅かす猫(ノネコ)に関して、捕獲とモニタリング調査の結果を報告。18年7月~19年2月末の捕獲数は38匹と当初計画(月30匹)を大きく下回ったものの、環境省は次年度に向け「データから森林内の状況が分かってきた。今後も調査を続けながらより効果的な対応を探る」との方針を示した。
ノネコ捕獲検討会、奄美市で初開催|南海日日新聞
捕獲数が少なければ譲渡する数も少なくなりますから、殺処分リスクも当然少なくなるわけです。
ではどうして捕獲数が当初の予定より少ないんでしょうか?考えられるのは2点です。
- ノネコ発生源対策でTNRを長く行っているから
- 猫条例もできたことで、猫飼いさんの意識が高まってきているから
こちらも一つずつみていきましょう。
ノネコ発生源対策でTNRを長く行っている
奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画では、ノネコ発生源対策としてTNRもすると記載があります。
環境省、鹿児島県、奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町が役割分担をして実施する。ネコ問題についての普及啓発は環境省、鹿児島県、5市町村が連携して実施し、条例に基づく適正飼養推進や飼い猫の不妊去勢、ノラネコのTNR事業等は5市町村が中心となり関係団体等と連携して実施する。
奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画
実際のところはノネコ管理計画より前から奄美大島ではTNRが行われています。
集落周辺に生息するノラネコに対しては、TNR事業を行っている。2013 年度に奄美市、2014 年度に大和村がそれぞれ事業を開始し、2016年度からは5市町村全てが事業を展開している*8。
奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画
ではなぜTNRが殺処分ゼロの理由の一つになりうるのかというと、ノネコの発生源の一つとして集落周辺の一部の猫が挙げられるためです。
TNRしていなかった時代であれば、一部の野良猫が山へ入りノネコとなり山で繁殖しノネコの数は増えていたことでしょう。
しかしTNRをしていることで、避妊去勢をほどこされた猫は山に入っても繁殖はすることはありません。
繁殖しないという事は増えないという事、数が増えなければそれだけ譲渡を受けられる人の数に近くなりますから、殺処分される可能性も当然低くなるわけです。
これが奄美大島でTNRを全くしなかった場合、「殺処分ゼロの理由」なんて記事を私が書けなかった可能性すらありますので、ノネコ管理計画が始まるより前から動いていた奄美大島もまた殺処分ゼロに貢献していると言えます。
猫条例もできたことで、猫飼いさんの意識が高まってきているから
ノネコ発生源として野良猫もあげられますが、放し飼いの猫もまたノネコ発生源と考えられています。
集落にいる放し飼いの猫やノラネコは、簡単に森林内へと入っていくことが可能であり、実際にネコが林道等を利用していることが確認されている。そうしたことから、集落にいる放し飼いの猫やノラネコが森林内に入り、野生動物を襲うことや、その一部が野生化してノネコ個体数が増加することが懸念される。
奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画
そんな奄美大島ですが、2011年に猫条例が定められました。
その猫条例を簡単にまとめると、以下の内容になります。

飼い猫を登録し、マイクロチップ・首輪の装着。室内飼いをし避妊去勢手術を行う。
こういった条例ができたわけです。
現在も、みんなが100%できているというわけではないですが、しかしそれでも前と比べると随分、適正飼養しているおうちも増えてきたと感じます。
実際こちら数値も検討会で出ていました。
(※飼い猫登録していない方もいらっしゃると思いますので、実際はもう少し低い可能性があります。)
- 完全室内飼養率:瀬戸内町92%、奄美市と大和村80%台、その他自治体50%以下
- 不妊化率:宇検村は100%に近づいてきている、その他自治体も概ね80%以上
- マイクロチップ装着率:各自治体不妊化率より低い、全自治体で70%以下

不妊化率が高くなればなるほど、万が一山に行った飼い猫が繁殖する確率も低くなりますので、殺処分ゼロに貢献していると考えても良さそうです。
更に飼い猫のマイクロチップ装着率も上がっていますので、万が一山に行ってしまった子が捕獲されても、家に帰れます。
この点も注目しておきたいところです。
この先も殺処分ゼロで行けるのか?
2022年6月現在、奄美大島のノネコ管理計画で捕獲された猫は安楽殺されておりません。
これはひとえに、譲渡できる土台を整えている人や譲渡認定者のおかげと言えます。
ただし、これから先も殺処分ゼロで行けるのかについてはわかりません。
奄美大島では、ノネコを譲渡するための土台は整っているのですが、譲渡を受ける人が不足しています。
これはどこの場所でもそうですが、猫が多すぎて日本全体が飼い主不足に陥っているためとも言えます。
また、ノネコの飼い主になれると知らない人も多く、「奄美では否応なしにノネコの殺処分がされている」と勘違いしている方までいるのも問題です。
ですから、もし「奄美大島のノネコも幸せになってほしい」と考える人がいるのであれば、是非「ノネコの飼い主を募集している」事実も広めてほしいです。
色々な憶測が飛び交っているこの計画ではありますが、「捕獲された猫に幸せになってほしい」という点では協力し合えることもあるかと思いますので、ノネコの飼い主募集中。こちら、どうぞ、よろしくお願いします。
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